二流小説家

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)


1ページ目からウザイ。小説家の主人公が実際に自分の身に起きたことを書いた、という体裁が見事にウザくって、もうこの時点で読むの止めようかと思ったけれど、「このミス」「週刊文春ミステリーベスト」「ミステリが読みたい」で第1位だったという帯の真偽を確かめたくって最後まで読んでみることにした。すると、途中、俄然面白くなって、それはどこらへんかというと、クレアが出ていたところだけど、明るくて賢くて大人にこびず、でもなれなれしくてちょっと生意気、という女子高生キャラは見事に中年男性読者を虜にする。
けれどそれも、クレアの退場というか出番が減ると、ほかに売りがなくなってしまう。そしてマイナスポイントは確実に増えていき、例えば、途中途中に挿入される、主人公が書いたSF作品やヴァンパイヤ作品の断片は、全く意味のない水増し。作者としてはなんらかの趣向のつもりなのだろうが、ジャマなだけ。
それに、アメリカの法曹界のことは知らないが、売春婦が辣腕の弁護士になるという設定はいくらトリックのためとはいえ有り得ないのではなかろうか。
被害者の頭部が埋められた場所を推理するくだりも、なぜ主人公がそれと気づくのかよく分らない。読者に分るように書いて欲しい。
そして、被害者の夫を装う、連続殺人犯とは別の殺人犯が、周りに警官がウヨウヨしている中で、なんで主人公らを殺そうとするのか、そのバカさ加減にあきれる。
結局、「史上初、三冠達成!」という惹句に偽りあり、と断定。というか、「このミス」やら「文春」やら「ミステリが読みたい」やらの評判なんぞ、クソだということが判明したのだった。