恋人たち

夫と姑との暮らしに飽いた中年主婦が少しだけ危険な匂いのする中年男にときめく話と、若くして妻に先立たれた男がやるせない人生から抜け出せない話と、ゲイの若手弁護士が同級生の営業マンに抱き続けた恋心を隠し通す話。

主婦は男のダメっぷりに気づかされて夫の元に戻り、ヤモメ男は立ち直りの兆しを見せ、ゲイは自信家の貌を自ら剥ぎ取る。それぞれがそれぞれの決着らしきものに行き着く。

主要人物の皆が二枚目や美人でないことがイイ。二枚目や美人でないからこそのリアリティと味がある。例えば、ブスで腹がタプタプの主婦瞳子が愛おしく思える瞬間がたまにある。たいがいの時間はブスでタプタプでバカなんだけど。

ルーム

 

ルーム [DVD]

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7年間監禁されるという設定は、似たような事件が割と最近日本でも起こったくらいで、目新しさはない。もちろん、目新しくないことは面白くない、と言いたいわけではない。

が、目新しさの有無は置いといても、面白くはなかった。詰まらないとは言わないが、面白くはなかった。

実に大雑把な計画で脱出できたのは、映画だから、まあ許せる。それなりに緊迫感はあって、エンディングにはちょっと早いな、と思っていたら、そこがちょうど映画の折り返し地点だった。

普通なら、脱出できてめでたしめでたし大団円のところ、そこから映画の第2章が始まる。よく言う、王子様と王女様のハッピーエンドのその後の物語である。それがこの映画の後半部分であって、その意欲に拍手してあげてもいいけど、その内容が優れているとは言い難かった。ま、フツーである。

ただし。この映画にもフツーではなく優れた部分はある。ジャック役のジェイコム・トレンブレイである。母親役の女優はアカデミー賞の主演女優賞を獲ったらしいが、ジェイコム君こそ賞を与えるにふさわしい。もちろん主演男優賞を。

アンジェイ・ワイダ死去

 

灰とダイヤモンド [DVD]

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9日。90歳で。

三十数年前、付き合ってた彼女の下宿のテレビで、「灰とダイヤモンド」を観た。

それまで観た映画の中で最高だった。それから観た映画の中でこれを超えるものはまだ観ていない。

ご冥福を祈る。合掌。

マネー・ショート 華麗なる大逆転

 

 

世間の常識に逆張りで大儲けを企む男たちの苦悩とそれに続く成功の物語なのだが、それがこの映画の全部でないところに、この映画のもしかすると欠点がある。

逆張りの保険料を払い続ける不安や、サブプライムローンが破綻してもCDS(彼らの賭けの対象)の値が下がらない不条理な市場。これらの困難を克服して莫大な利益を得る万々歳の結末だけだったなら、この作品は痛快娯楽映画で、それはそれで面白かったに違いない。

だが、話はそれほど単純ではなく、いよいよ大儲けしそうになると、男たちは大儲けすることを躊躇ったり罪悪感を持ったりする。唯一楽しげなのは銀行員のジャレド・ベネット(彼が貰ったボーナス4700万ドルはCDSを売ったためのものなのだろうか?)だけで、彼にしても屈託が全くないとは言い難い。(チャーリーとジェイミーに至っては、CDSを売るのに四苦八苦しているシーンが、面白いけれど意味が分からない。)

つまりは、事実がそうであったからといって映画で端折ったらいけないことはないのに、あえてなのかどうか知らないが、「痛快さ」を蔑ろ(それは大きくはないけれど)にして、面白くもない「事実」を省略しなかったのである。もしかして、そうすることで、映画としての奥行きを出そうとしたのかな…。

なんにしても、面白い映画ではあった。

 

 

 

まほろ駅前多田便利軒

 

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

 

 

記憶力がないので、読み返したら前の記憶は99%なくなってて、新鮮な気持ちで読めたのは、経済的にはありがたかった。(気分としては、記憶力のなさに情けなくなるのだが)

で、今回も面白く読めたのだけど、面白すぎて、読み終わるのがもったいなく、終盤で一息ふた息いれた。(自慰行為で早くイクのをガマンして休憩するようなものだ)

だけど、面白いものはガマンなんかせず、一気にイカなくてはいけないのだった。時間を空けてチビチビ読んでたら、前の日読んだことを忘れたり、前の日盛り上がってたレベルまで気持ちが戻らなかったりで、(今度は別の言い方をするけれど)美味しいラーメンをゆっくり食べすぎて、冷めてしまって元も子もない状態に陥ってしまいました。

 

 

松本直晃

設定を間違って録画していたソフトバンク対西武戦を、調べたら試合結果は分かるのに、そのまま夜、漫然と見始めた。そしたら、松本直晃という、名前も知らないピッチャーがリリーフで出てきた。

今年ドラフト10位で入団の25歳、初登板らしい。0対2で負けてる三回裏ワンナウト1、2塁。ここで打たれたら、もう一軍で投げることはないかもしれない。がんばってほしい。

でも、打たれた。それが彼の実力なのか、運なのか。もう一度彼を見ることはあるのだろうか。

言の葉の庭

 

劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

劇場アニメーション『言の葉の庭』 DVD

 

 

新海誠監督の『君の名は。』が好評だと聞き予告編を見るが、それほど面白そうには思えなくて、同じ監督の『言の葉の庭』をGyaoで見てみた。

風景描写の幾つかは実写かと思うほどの精巧さに驚かされつつも、決定的によろしくないのはキャラクターである。人物が絵的に魅力がない。動きもぎこちない。デフォルメのない割とリアルな画にしたかったのだと推測するが、デフォルメのない画であっても魅力的な画は描けるはずであって、これだったらマンガチックな絵柄の方がよっぽどマシである。

と、書いてて思ったのは、『惡の華』のキャラである。あれくらいのキャラ(絵的にも動きにしても)を『言の葉の庭』に出してたら(出せてたら)、もう少し点数をあげたのに。

ちなみにストーリーは、陳腐とまでは言わないが、目あたらしさは全然ない。

ということで、今後、『君の名は。』を見ることはないだろう。

渡部愛

NHK将棋講座のアシスタント渡部愛初段が妙に可愛い。

最初は歯並びの悪い(かどうかは分からないが、悪そうなイメージがある)変なコだと思ってたら、見慣れてくるとなぜか可愛く見えてきたので驚いている。

ただ、可愛く見えるのは髪を後ろで束ねたときのことで、オカッパ?みたいな髪型のときはちょっとキモい。

『春に散る』

沢木耕太郎朝日新聞連載小説が終わった。まあまあ面白かった。

老人たちが一つの家に住むまではちょっとセンチメンタルな小説かと思い、将吾が出てきてスポーツものかと思い、加奈子に特殊能力があると分かってオカルトチックに変わるかと思い、つまりはこの小説が一貫してなかった印象。