マネー・ショート 華麗なる大逆転

 

 

世間の常識に逆張りで大儲けを企む男たちの苦悩とそれに続く成功の物語なのだが、それがこの映画の全部でないところに、この映画のもしかすると欠点がある。

逆張りの保険料を払い続ける不安や、サブプライムローンが破綻してもCDS(彼らの賭けの対象)の値が下がらない不条理な市場。これらの困難を克服して莫大な利益を得る万々歳の結末だけだったなら、この作品は痛快娯楽映画で、それはそれで面白かったに違いない。

だが、話はそれほど単純ではなく、いよいよ大儲けしそうになると、男たちは大儲けすることを躊躇ったり罪悪感を持ったりする。唯一楽しげなのは銀行員のジャレド・ベネット(彼が貰ったボーナス4700万ドルはCDSを売ったためのものなのだろうか?)だけで、彼にしても屈託が全くないとは言い難い。(チャーリーとジェイミーに至っては、CDSを売るのに四苦八苦しているシーンが、面白いけれど意味が分からない。)

つまりは、事実がそうであったからといって映画で端折ったらいけないことはないのに、あえてなのかどうか知らないが、「痛快さ」を蔑ろ(それは大きくはないけれど)にして、面白くもない「事実」を省略しなかったのである。もしかして、そうすることで、映画としての奥行きを出そうとしたのかな…。

なんにしても、面白い映画ではあった。