星と輝き花と咲き

 

星と輝き花と咲き (講談社文庫)

星と輝き花と咲き (講談社文庫)

 

 実際にいた人のことを書いているので、ちょっと伝記っぽい感じがする。もちろん、作者としては小説的に必要なエピソードを選び、必要な脚色でもって書いているのだとは思うが、事実から離れすぎてもいけないから、どうしても伝記的になってしまうに違いない。

 

女が義太夫を語るのは、今で言えば、女子プロレスみたいな感じだったのだろうか。強さを見たければ男のプロレスを観ればいい。それでも女子プロレスに人が集まるのは、強さ以外の要素を求めてのことだ。極論すればエロ的要素である。

しかし、本作の竹本綾之助の義太夫語りは、女子プロレスではなく、女子新体操や女子シンクロナイズドスイミングに近いもの(観客の求めるものという意味で)なのかもしれない。人好き好きなので断言はしづらいが、男の新体操や男のシンクロよりは女子のそれの方が観るにはいい。KOやゴールという分かりやすい勝ち負けでなく、美しいかどうかで判断される価値の場合、女は男に勝っているからだ(それすらエロの要素があってこその「勝ち」なのだろうけれど)。