小さいおうち

 

小さいおうち (文春文庫)

小さいおうち (文春文庫)

 

 最初は読みごたえがなくて、「あまロス」ならぬ「肉ロス」状態だった。

そして、作者の意図(どんな作品にしたいのか)が分からず、そのうち、ああ、平井家を舞台に戦時下の市民生活を再現しながら、その頃を生きた人たちのその頃の感じ方を書きたいのだなと思い、さらに読み進めると、時子奥様と板倉さんの秘めたる恋が主題になるのだと分かった頃には、その程度の作品なのだと一人合点した。

つまり、タキちゃんはこの小説では狂言回しの役だと思っていたのだけど、最終章になって、やっと、タキちゃんも主人公の一人なのだと分かるのだった。時子奥様に恋した女性として。