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凶悪

 

凶悪 スペシャル・プライス [DVD]

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死刑囚が監獄の中でキリスト教に入信し、自分が殺した人たちのために祈るのは、今が死に向かっているだけの時間ではなく、いま生きていることに意味があると信じることができるからだ。つまり、死ぬことの恐怖から少しでも逃れたいからだ。

藤井記者はそれが許せなくて、法廷で須藤に怒りを投げつけた。死んでも償えない罪を生きて償えるわけはないし、これっぽっちも安らかな気分を味わわせたくない。いつ執行されるか分からない恐怖に怯えて生きろ。それ以外にお前に生きる意味を与えない。そういうことだ。
 
木村は面会にきた藤井に、「俺を一番殺したがっているのは被害者でも須藤でもない。」と言い、藤井を指差した。「人を殺した俺とお前のどこが違うんだ?」ということなのだろうが、この問題は深すぎる。
 
人を殺すことが怖いのは本能なのだろうか。社会的な要請に基づく後天的な感情なのだろうか。
人を殺すことに怖れ(畏れと言った方がいいかもしれない)のない人間は実際いるのだろう。そのことが怖い。