ぐるりのこと。

 

ぐるりのこと。 [DVD]

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 うだつのあがらない法廷画家と暮らす女が、産まれたばかりの子を亡くし、心を病む。画家は飄々と、それまでと変わらぬ態度で彼女を見守る。ある雨の夜に、壊れそうになる彼女を男はやさしく包み込む。やがて、彼女の心は解きほぐされ、生きる力を取り戻す。

ざっとストーリーを追えば、そういう映画だ。心が病んで犯罪に走ったりとか、男が女を捨てたりとか、いかにもありそうな展開にはならず、こういう地味な(見方によっては「教育的な」とも言える)映画が正面切って作られるのは、ある意味おどろきである。もっとも、派手で刺激的な映画ばかりが世の中にあるのでなく、こんな映画も少しはあっていいと思う。

それに、「地味」とは言ったが、「地味」だから面白くなかったとは言ってない。リリー・フランキーは二枚目とは呼べない顔なのに、カッコいい。木村多江のスウェット姿は、肌が見えずとも、中身の肉感が想像されてエロい。寺島進安藤玉恵八嶋智人柄本明ら脇役もいい味を出している。

ただ、心の安寧を取り戻した女の微笑みはまるで仏様のようで、そこまで神々しくならなくていいんじゃないかと思う。男に週3のセックスを強要する、映画冒頭のかわいらしい女の方が僕は好き。