12人の優しい日本人

 

12人の優しい日本人 [DVD]

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 面白かったのだが、観終わったときにしっくりこないのは、誠実な主人公(らしき人)が本当は私怨にまみれた人間だったというのが、カタルシスを招かないからなのだろう。本家の『12人の怒れる男たち』は、一人の男が最後まで真摯に問い続けることで真理にたどり着くところに爽快感があるのだが、三谷幸喜は、あえてその模倣と見せかけて裏切ってみせる。そして、その役割を、豊川悦司に、最初は不真面目そうに見える人物が最後は痛快に問題を解決するというところで代理させようとしたのだろうけれど、ひねった分だけ効果が足りない。もちろん、三谷幸喜は、あくまで群像劇を書きたくて、主人公が一人だけの映画を作りたかったんじゃなかったのだろうから、仕方ない。