ポトスライムの舟

ポトスライムの舟 (講談社文庫)

ポトスライムの舟 (講談社文庫)


表題作よりも併録の「十二月の窓辺」のほうが面白い。
小説や映画ではよく、暴力や人の生き死に、あるいは性行動などがモチーフとなりがちで、それらはそもそも人間の興味や関心がいくものだから、それらを書いたり撮ったりするだけで、なにかその作品が興味深いものだと読者(観客)は思ってしまう。そしてそれだけでなく、作者(監督)自身もそういう勘違いをお菓子勝ち(もちろん「犯しがち」の間違い)だと思う。
そういう意味では、「ポトスライムの舟」には暴力や性描写がなく、それらに頼らずに小説を成り立たせているのは好ましい。
ただ、面白くはなかった。
かたや、「十二月の窓辺」には暴力の描写がある。V係長の言動は言葉の「暴力」と言っていいだろうし、雇用環境促進公団の窓に見えたアサオカとその上司(?)のやり取りには性的な予感も感じさせる。そして、こちらの作品のほうが面白い。
つまりは、暴力や性描写に頼る小説や映画、それらを作る小説家や映画監督を誹る自分が、実のところ、暴力や性描写を求めているということなのだろうか。

巻末の解説は、読んで失望することが多い。今回もそう。偉そうなことを書いているが、何がいいたいのかよく分らない。あるいは、いいたいことはわかるが「それがどうした?」といったことだけ。もちろん、僕の読解力のなさゆえ、というのが本当のところだ。