廃墟に乞う

廃墟に乞う (文春文庫)

廃墟に乞う (文春文庫)


受賞時に文芸春秋で読んだ表題作はなかなか良かったのだが、まとめて全6作を読むと、ベタベタした浪花節っぽい小説ばかりで後味も良くない。
解説(佳多山大地という「ミステリ評論家」らしい)におそらく間違いが2点ある。「博労沢」の犯人原田は「腹違いの弟」ではなく、長沼の子である。「復帰する朝」で仙道が中村由美子の左手薬指に指輪がないことを確かめたのは、作者が仙道の失恋を読者に連想させるためではなく、妹の中村春香が姉から奪ったものが姉の婚約者だったことを示すためなのである。