名もなき毒

名もなき毒 (文春文庫)

名もなき毒 (文春文庫)


どこに主旋律があるのか不明なままストーリーは続く。原田(「あえて「ゲンダ」と読ませるのがよく分らないが)の話と古屋明俊の話と、どっちがメインなのか分らないまま話は進んで、その二つの話を最後は無理やりくっつけた感がなきにしもあらず。二つの話を対比させたかったのだろうけれど。
そしてラストがまた不可解。主人公(杉村)が北見氏のあとを受け継いで私立探偵になるのかと思えばさにあらず。だったら、思わせぶりなストーリー展開はやめた方がよくないかと思う。あの展開なら、妻子を捨ててささやかな人助けのために私立探偵になるべきでしょう。その期待を作者はあえて裏切ったのでしょうか。確信犯的に。…分りません。
ただ、全体としては面白かったです。分厚い文庫本が、「こんなに読まなきゃならないのか」というウンザリ感でなく、「こんなに読めるんだ」というウキウキ感だったから。