バス

昨夜は飲み会帰りにバスを待った。バスに乗って自宅近くのバス停で下りると、そこからはもちろん歩いて帰らねばならず、傘はさしてもズボンの裾が濡れる。それがちょっと嫌なので、いっそタクシーで帰ろうかと少しだけ悩むが、思いとどまる。バス停前はタクシーがゆっくりと通りすぎ、「いつでも手を挙げてください。お待ちしてますよ」みたいなオーラを感じるが、誘いには乗らない。タクシー代は2千円もかからない。昼飯に500円の定食を選ぶ僕にとって安いとはいえないけれど、酔ってバスを待つことを考えればそれほど高いともいえない。
けれど、「そんな生活をしたらダメになる」みたいな感覚がどうしても僕に手を挙げさせない。タクシーに乗ることはゼイタクというほどのことはないけれど、バスに乗って、財布から小銭をこぼさないように探したり、乗客をかき分けるように降り口に向かったり、そしてズボンの裾や肩口を雨に濡らしながら歩いたり、そんなちょっとずつ面倒なことを避けて生きていけば、僕のような小さな人間はちょっとずつダメな人間になってしまうような気がするのである。