『エステルハージ博士の事件簿』『殺人鬼フジコの衝動』


殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)


世界幻想文学大賞」の惹句にだまされて(とは言い過ぎか)『エステル〜』を読んでみたものの面白くなくてなかなか先に進まず、ついにあきらめて『フジコ』に鞍替えしたら、こっちは2,3日で一気読み。
自分には面白くないのに世間的には評価されている本というものは、できれば最後までガマンして読みきりたいのだが…。
『フジコ』は一気に読ませるけれど、素直に「面白い」とは言いにくい作品で、特に前半の子供時代は悲惨すぎて不快と言ったほうがいいくらい。罪悪感もなく人を殺すようになったフジコのほうが、読んでいてよほど救われる気持ちになる。
最後に真犯人を提示してミステリーっぽいつくりになってはいるけれど、それはつけ足しみたいなもので、真犯人が誰かなんてこの小説にはほとんど意味がない。ただ、「ああ、この本はミステリーだったんだ」という安心感をもらうことができて、悲惨文学(というジャンルはないと思うけど)を読んだ後味の悪さを緩和してくれる効果はある。
蛇足だが、文庫版の表紙(ブックカバー)はスタイリッシュというのか、カッコイイと思う。これもこの本を読んでみようと思った大きな理由。