蜘蛛女のキス

蜘蛛女のキス (集英社文庫)

蜘蛛女のキス (集英社文庫)


たしか20年くらい前に僕はこの作品が原作の映画を観たことがある。薄暗い、洞窟みたいな場所で男が二人、話をしているシーンしか覚えていない。原作を読めばそこが洞窟ではなく監獄だったことが判るが、いずれにしろ、ストーリーなど一切忘れてしまって、ただ、なにか文学的な臭いをその映画に感じた記憶だけが残っていた。
ふつうなら映画を観たあと原作本を買うことなどないのだが(その逆、原作を読んだ後に映画を観ることはないことはない)、作者がプイグなので買ってみた。そして読んでみた。
エンタメ系の本を読んだ後は文芸系というか文学系というか、言ってみれば小難しい本を読んでみたくなるので、今回がその文芸系の順番だったわけであるが、小難しくはなかったけれどやはり文芸系っぽくはあった。そして文芸系の作品を読んだときにだいたいいつも感じるように、退屈といえば退屈だけど最後まで読みたいと思わせるくらいのビミョーな面白さはあった。もちろん、『ブエノスアイレス事件』には遠く及ばなかったけれど。