スロー・ラーナー

スロー・ラーナー

スロー・ラーナー


10年か20年か忘れたが、ずいぶん昔に買って、ちょっとだけ読んですぐに挫折していたものを、最近読む本がなくなったので、本棚から引っ張り出した。
短編集なのだが、まずは「作者あとがき」から始まる。それは「スロー・ラーナー 序」という最初の章(?)で、この中で作者は掲載作を順番に自己批評しているのだが、内容は「作者あとがき」としか言いようのないものである。それがこの本の最初の「作品」らしい。
まず、その文章というか文体に驚かされる。例えば、「主語」という箱を用意してその中に適当な名詞を書いたメモを入れる。次に「動詞」という箱に適当な動詞を書いたメモを入れる。そして「目的語」という箱の中にも適当なメモを入れ、最後に「修飾語」という箱にまた適当なメモを入れる。そして、順番に箱の中に手を突っ込んで、掴んだメモを並べて文章にする。……という方法で作られた文章を読まされている気がする。と思って読み進めていたら、本人(作者)も文中でそれに近いことを言っていた。
そんな文章を読まされるのでは、脳ミソが捩れそうになる。ガマンして読むとマゾ的な快感が生まれると言えなくもない。
作者は掲載作の全部を出来損ないの失敗作のように評しているが、それは、つまり、「読者のみなさん。この本を読んで面白くないと思う人がいるかもしれないけど、僕がちゃんと書いたらほんとは面白いものが書けるんだよ。だって僕はこれが失敗作だと知っているんだから」という言い訳だったり、「こんな失敗作でも面白いと思ってくれた人もいるよね、案外たくさん。でも、本気だしたらもっと面白いものが書けるんだよ、僕は」という自慢なのである。しかし、それを巻末に書いたらただの強がりにしか思われないものだから、本の最初に持ってきたのである。…と予想してみた。
さて、本編は最後まで読みきれることやら。