向日葵の咲かない夏

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)


先日、といってもずいぶんになるが、道尾秀介が直木賞を獲った(『月と蟹』で)ので、一冊くらいは読んでみようと思い、無論、単行本を買う気はなかったので文庫の中から選びに選んで『向日葵の咲かない夏』を買った。
初めての作家の場合、最初の1冊が面白いと続けて読むし、面白くないと二度と読まないことがふつうなので、どの本を最初の1冊に選ぶのかはとても重要なのである。そして、読んでて面白くなくても、とりあえず評価を下すのは最後まで読んでからにしたいので、我慢して読み続けることになり、そこまでやったんだから、それでも面白くなかったらその作家の作品は二度と読まなくても後悔はない。
で、道尾秀介は僕の「二度と読まない作家」リストに載せられたのだった。
以下、ネタバレあり。
物語として破綻している、とまではいかずとも、瑕が多い。例えば、3歳にしてはミカが大人びている(ただし、解説によれば、トカゲだからそうなのだ。解説ではそうは書いてないが、そういう意味のようだ)とか、S君の作文に×印がつけられた文字が「は、ん、靴、い、物、で、ど、せ」だった、と書いてあるのに、実際のS君の作文に「靴」という文字は出てこない(「くつ」ならある)とか、その他もろもろ。
そういう瑕だけでなく、そもそもこの小説を読んでてちっとも楽しくないのだ。「楽しい」というのは、別に、笑えるとか感動するとか、そういうことだけではもちろんない。いろいろな「楽しい」があっていいのだが、この作品には僕にとっての「楽しい」がなかった。