空中ブランコ

空中ブランコ (文春文庫)

空中ブランコ (文春文庫)


表題作『空中ブランコ』は、内田の陰謀(というのは大げさだが)で空中ブランコが失敗していると読者に思わせて、実のところそれは公平の勘違いであって…というオチに作者は持っていきたかったのだろうか。まさかそんなことはなかろう。公平が勘違いしているのがミエミエなので、その上でなんらかのヒネリの効いたオチがあるのかと思っていたら、ヒネリはなかった。最後に伊良部が首をひねったくらいである。
『義父のヅラ』でも、義父(野村)の頭がヅラだと読者に思わせておいて、実はそうじゃなかったというオチかと思えば、やはりヒネリらしいヒネリもなく義父の頭はヅラだった。
ああ、もう、こんなのが直木賞かと思っていたら、最後の『女流作家』で、中島さくらが出版社で牛山(星山)愛子らに切った啖呵は爽快だった。ベタっていえばベタなんだけど、年を食ったらワビサビよりもベタに泣かされるのだろうか。
だけど、それでもプラマイで言えば失地回復にはほど遠く、なんでこれが直木賞?の感想に変わりはなし。