ハーモニー

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)


「白銀ジャック」を読んだあとだからっていうのもあるけど、やっぱ小説は文章に味がないといかんね。「白銀〜」はミステリだから、謎を早く解きたくて(というか解いて欲しくて)先へ先へと読み急ぎ、それが面白さであるような(というかそれしか面白味はない)作品だったけど、「ハーモニー」は読み急ぐことなく文章を味わいながら読み進めることができる小説だ。
というのは褒め過ぎのきらいがあるし、過度に管理された社会とそれに反発する主人公という設定ははずかしいくらいにSFとしてはよくある設定だ。そして、「虐殺器官」のとき言葉で人を虐殺に駆り立てることができるという突拍子のなさは、今回も人の意志とか意識を科学的に制御するという、かなりぶっ飛んだストーリーであるけれど、前回同様、無理を承知の力技で読者にギリギリのところで納得させているのである。