告白

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)


第1章「聖職者」での森口悠子の告白がとてもよい。犯人への怒りや復讐心を秘めたまま、生徒たちへ静かに、そしてやがて冷徹に語りかける口調が不思議と心地よく響く。それは時代劇でこれから始まるだろう敵討ちの場面を待つ気持ちに似ている。
この第1章だけを短編小説として完結させてもいいくらいのデキなのだが、第2章以降がどうなのかといえば、まあまあである。というか、第1章がデキすぎなために第2章以下が「まあまあ」と思えるだけで、ほんとは十分おもしろいんだと思う。が、若干、話が強引というか無理がある。気にするほどではないにしろ、小説全体で100点をあげられない欠点になっている。
例えば、すぐに思いつくのは、寝ている「世直しやんちゃ先生」から血を抜くとか(睡眠薬で眠らせてなら分るが小説ではそんな説明はない)、その後世直しやんちゃ先生が森口を尾行して、森口が手を加えた牛乳パックを取り替えるとか(隠れて見ていてどれが血液混入牛乳パックか分るのだろうか)、ほんのちょっとでも、「それ、ないだろ?」という思いを読者が感じて、そういうのがいくつか積み重なると作品全体がダメになる(この作品ではそこまではいってないが)。
そしてラストの爆発。冒頭はミステリーっぽく、中盤は精神の残虐性を純文学っぽく書き連ねてきて、最後はエンターテインメントになってしまい、盛りだくさんと見るか一貫性がないと見るか。
そんなこんな言っても、それでも面白い本だった。