ドラマ「火の魚」

平成21年度文化庁芸術祭の大賞受賞作である。
NHK広島のホームページにある「あらすじ」によると、テーマは「命の輝き」である。それはそれで間違いはないというか、たしかにそうなのだろうけれど、僕の感じたテーマは「老人の恋」である。
折見がガンであることを知った村上の狼狽振りを「恋」と言わずしてなんと言おう。折見に影絵を強要し、あるいは屁理屈を捏ねて金魚を殺させる行為は、小学生男子が好きな女の子に意地悪することと同じだ。自分の担当から折見を外そうと考えるのは、自分の気持ちを受け入れてもらえないことを怖れるが故だ。つまり、村上は折見に恋をし、そんな自分にうろたえていた。
しかし、「老人の恋」だけでドラマを作るわけにはいかず(と、原作の室生犀星が考えたと思うのだが)、「老人の恋」の結末を「命」とか「生」とか「死」というもっともなテーマにすり替えて作品を仕上げたんだと僕は思う。
にしても、このドラマは面白かった。