コンビニ人間

心に障害のある主人公と彼女の周りとの間に生じる摩擦を彼女の側から描いた作品である。

と言っても、障害者の苦悩を訴えたり、障害を克服する姿を感動的に見せたりする類いのものでは全くない。(そもそもこの作品の中に「障害」という言葉自体でてこない。)

誰もが、職場や学校や街中で「困った人」の一人や二人見たことがあるだろう。どこかフツーの人とズレていて、訳の分からないところで怒りだしたりする人である。主人公は他人を怒ったりはしないが、フツーであることが理解できず、しかし、フツーであるフリをしないと暮らしにくいことは理解している。

そういう主人公を通して、この作品は読者に、フツーであることの異常さとか醜さとかを見せつけている。我々がフツーだと思っていることが本当はフツーじやないんだと教えてくれる。

李鷗

仮にこの作品を僕が書こうとしたら、拳銃の構造に詳しくないといけないし、旋盤やフライス盤の使い方も覚えないとダメだし、中国語を書いたり読んだりできないといけないしし、クラブやバーがどんなところか分かってないといけないし、つまりは、関係者に取材するか、関係書籍を読むか、とにかく勉強しないとこの小説は書けないわけで、高村薫が工業高校卒のガンマニアで、銀座の(じやなくてもいいけど)クラブでバイトしながら中国人の恋人と付き合ってたのなら別だけど、そうでなかったら(たぶんその全部が「そうでない」の方だと思うけど)どうやってそれらの知識を得たのだろう。

作家というのは大変な職業だと思う。

ザ・スクウェア 思いやりの聖域

いつもタイトルに拘ってしまうのだが、最近、外国映画に邦題をつけるとき、サブタイトルが分かりやすすぎるというか説明的というか、サブタイトルがついたが故に底の浅い印象を与えてしまっている映画が多い気がする。

「ザ・スクウェア」だけだとSF映画だと思われると心配したのだろう。

で、タイトルの話はそれくらいにして、中身がどうだったかというと、よく分からない映画だったというのが僕の感想。つまり、あまり面白い映画でなかったということと、監督が観客に何を面白いと思わせようとしたのかも分からない映画だったということ。

 

グッバイ・ゴダール

ゴダールが生きていたらこの映画に怒り狂うであろうから、ゴダールがすでに死んでいることを教えてくれる映画である。というのはさておき、それくらいゴダールを愚かで性格の悪い人物として描いている。それが逆にゴダールを魅力的に見せているのならいいのだが、単なるバカで性悪な男を見せられるだけだから、映画としては面白くない。

だけど、ゴダールの妻、アンヌ役であるステイシー・マーティンがとても可愛い。ヌード姿の小さな乳房がとても可愛い。

この映画は、見苦しいゴダールではなく、可憐なステイシー・マーティンを(アンヌではなく、アンヌを演じているステイシー・マーティンを)観て楽しむ映画なのである。

顔も知らない福浦

今週末のスポーツ界。白鵬が41度目の優勝と幕内1000勝。羽生結弦が平昌五輪後初の大会で優勝。タイガー・ウッズが5年ぶりの復活優勝。そして、ロッテの福浦が2000本安打達成である。

前の3人と比べたら有名とは言いがたい、福浦。私自身、福浦の顔が思い浮かばない。というか、はなっから知らない。でも、というか、だから、なのかもしれないが、一番誉めてあげたいのが(というのも、おこがましい言い方だが)、福浦なのである。

2番目はウッズ。スキャンダルと不祥事と体の故障があって、もう復活はありえないと思っていた僕は、彼のスゴさを改めて知った。

たかが世界の終わり

よく分からない映画だ。

特に兄がなぜあれほど弟を嫌うのか。映画の中で説明シーンもない。

兄の嫁が弟に語ったのは、「あなた(弟)はあの人(兄)に関心がない」。これが、兄の弟に対するひどい態度の理由なのか?

よく、振られた女(男でもいいけど)が、「好きの反対は嫌いじゃない。無関心よ」と言うが、自分に対する弟の無関心が、あれほどひどい言動につながるのだろうか。仮に、弟を愛しすぎるがゆえに、だとしても。なんか、それだけじゃないような気がする。

ふつうなら、12年前になにか事件があって、それが理由で弟が家出した。そのときのしこりが12年経った今も消えていない、といったところだ。しかし、12年前になにか事件があったようなシーンはない。ないこともないかと思うシーンもあるが、これが断片すぎてまたよく分からない。たぶん、弟は当時からゲイで、同じ歳くらいの男の子が宵闇に隠れて弟の部屋(もしくは半地下室あるいは物置)を訪れていたらしきシーンである。

その男の子は、兄の話では最近死んだらしい。弟はその死を知らなかった。そして、このエピソードはそれ以上の展開を見せない。

結局、兄の憎しみなのか悲しみなのか怒りなのか、あるいはその全部なのか知らないが、弟に対する感情の原因は観客に明らかにされない。もしかしたら、登場人物たちも知らないのかもしれない。

そういう、訳の分からない話なのである、この映画は。

君の膵臓を食べたい

基本的には、「泣ける映画」はなるべく観ないようにしているのだが、なぜかミステリー要素のある映画だと思い違いをしていたことと、主演が浜辺美波だったことから、レンタルしてみた。

そしたらミステリー仕立てなどではなく、やっぱり泣かされてしまった。号泣である。通称「仲良しくん」が、桜良の家で桜良のお母さんに、「もう泣いていいですか?」と言って号泣するシーンで、私は「仲良しくん」以上に号泣してしまった。

ほんと、歳をとったら涙腺の緩みかたはハンパない。先日、録り溜めていた「チア☆ダン」の第2話、委員長が8人目の部員に立候補した場面で、嘲笑する生徒に対して若葉が、「人が好きなことするの、笑わんといて」と気っ風を切るとこで、やはり号泣してしまったくらいである。

といったことはさておき、浜辺美波はもう滅茶苦茶かわいかった。これも歳をとったせいなのだろうが、若いコがかわいくてたまらない。

浜辺美波を知ったのは、NHKラジオ第2の「ボキャブライダー」という英語の教育番組である。ラジオだからもちろん画はないのだけど、声だけ聴いていても無茶苦茶かわいく思えた。こういうケースではふつう、本人は画像で見ないほうがいいと決まっているが、ついついネットで検索したら見た目もかわいいので、今回、「君膵」を借りたというわけである。

そしたら浜辺美波はやっぱりかわいかった。かわいすぎた。そしてしばし、大人のどす黒い性愛でなく、純愛というものを信じたくなった。たぶん、そういうのって一時の気の迷いみたいなものではあるのだけど。