たかが世界の終わり

よく分からない映画だ。

特に兄がなぜあれほど弟を嫌うのか。映画の中で説明シーンもない。

兄の嫁が弟に語ったのは、「あなた(弟)はあの人(兄)に関心がない」。これが、兄の弟に対するひどい態度の理由なのか?

よく、振られた女(男でもいいけど)が、「好きの反対は嫌いじゃない。無関心よ」と言うが、自分に対する弟の無関心が、あれほどひどい言動につながるのだろうか。仮に、弟を愛しすぎるがゆえに、だとしても。なんか、それだけじゃないような気がする。

ふつうなら、12年前になにか事件があって、それが理由で弟が家出した。そのときのしこりが12年経った今も消えていない、といったところだ。しかし、12年前になにか事件があったようなシーンはない。ないこともないかと思うシーンもあるが、これが断片すぎてまたよく分からない。たぶん、弟は当時からゲイで、同じ歳くらいの男の子が宵闇に隠れて弟の部屋(もしくは半地下室あるいは物置)を訪れていたらしきシーンである。

その男の子は、兄の話では最近死んだらしい。弟はその死を知らなかった。そして、このエピソードはそれ以上の展開を見せない。

結局、兄の憎しみなのか悲しみなのか怒りなのか、あるいはその全部なのか知らないが、弟に対する感情の原因は観客に明らかにされない。もしかしたら、登場人物たちも知らないのかもしれない。

そういう、訳の分からない話なのである、この映画は。

君の膵臓を食べたい

基本的には、「泣ける映画」はなるべく観ないようにしているのだが、なぜかミステリー要素のある映画だと思い違いをしていたことと、主演が浜辺美波だったことから、レンタルしてみた。

そしたらミステリー仕立てなどではなく、やっぱり泣かされてしまった。号泣である。通称「仲良しくん」が、桜良の家で桜良のお母さんに、「もう泣いていいですか?」と言って号泣するシーンで、私は「仲良しくん」以上に号泣してしまった。

ほんと、歳をとったら涙腺の緩みかたはハンパない。先日、録り溜めていた「チア☆ダン」の第2話、委員長が8人目の部員に立候補した場面で、嘲笑する生徒に対して若葉が、「人が好きなことするの、笑わんといて」と気っ風を切るとこで、やはり号泣してしまったくらいである。

といったことはさておき、浜辺美波はもう滅茶苦茶かわいかった。これも歳をとったせいなのだろうが、若いコがかわいくてたまらない。

浜辺美波を知ったのは、NHKラジオ第2の「ボキャブライダー」という英語の教育番組である。ラジオだからもちろん画はないのだけど、声だけ聴いていても無茶苦茶かわいく思えた。こういうケースではふつう、本人は画像で見ないほうがいいと決まっているが、ついついネットで検索したら見た目もかわいいので、今回、「君膵」を借りたというわけである。

そしたら浜辺美波はやっぱりかわいかった。かわいすぎた。そしてしばし、大人のどす黒い性愛でなく、純愛というものを信じたくなった。たぶん、そういうのって一時の気の迷いみたいなものではあるのだけど。

大坂なおみ全米優勝

日本人初の4大大会初優勝で大盛り上がりだけど、大坂さんは自分が日本人という意識はどれぐらいあるのだろうか。生まれた国より育った国のほうに愛着が湧くのがふつうだと思うのだが。

逆に我々日本人は、彼女をどこまで日本人だと思っているのだろうか。もちろん彼女の国籍は日本なので、彼女が日本人であることに間違いはないのだけれども、見た目も言葉も日本人には見えない。

そこに違和感が生じるのだろう。我々の側にも彼女の側にも。彼女にはたぶん、日本で大騒ぎされることの戸惑いと、セリーナと同じようにはアメリカ人に愛されない哀しみとがあると、勝手に想像する。

私は人種差別に反対する者であるつもりだが、見た目がもっと日本人らしい日本人が優勝していたら、おそらくもっとうれしがっただろう。それこそが差別意識の現れだと言われればそうなのかもしれないし、日本人が優勝したというのに大喜びしないさみしい人間かもしれないが、私を非難する人に私は訊きたい。あなたはサッカーのW杯で日本を応援しましたか?たぶん、ほとんどの人が「応援した」と答えるだろう。そういう人に私は再度問いかけたい。「あなたはナショナリストですか?」と。

なにをもって日本人というかということと、なぜ日本人だからということだけで応援するのかということとは、同じ問題なのだと思う。

誤解のないよう言っときますが、大坂なおみ選手の全米制覇は素晴らしいことだと思っているのですよ、私も。

 

まともな男

 

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いい映画だけど、あとで観た「脱脱脱脱17」にコーフンしたので、こっちの感想が後回しになった。

最後は自動車事故で終わらないほうが、逆に怖くて深みのある映画になったかもしれない。

脱脱脱脱17

 

脱脱脱脱17 (ダダダダ セブンティーン) [DVD]

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松本花奈17歳女子高生が撮った映画。素晴らしい。どうして17歳の女子高生がこんな映画を撮れるのか不思議だ。

惜しむらくは主人公を松本花奈自ら演じていれば、日本アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演女優賞、主演男優賞、音楽賞は獲れていただろうと思う。

北澤ゆうほには女優としての才能はないけど、あんなに素敵な曲が書けて歌えるんだから、それで充分すぎる。

そして鈴木理学、サイコー。

 

暗幕のゲルニカ

 

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

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「楽園のカンヴァス」があまりにも面白すぎて、原田マハの最高傑作はこれだろうと思うと、彼女の他の作品を読む気にならなかった。けれど、TSUTAYAでこの「暗幕のゲルニカ」が推されていたので、2匹目のドジョウももしかしたら美味しいのかもしれないと思い、買って読んだら大ハズレ。

面白くなかった原因は何なのだろう。主人公である瑶子らキャラに魅力がないこと(「楽園の~」では、主人公の娘にとにかく萌えさせられた。)。ゲルニカ自体に芸術的な価値を感じられないこと(僕はピカソでは薔薇色の時代が大好きだ。)。などがすぐに思い付くところ。

もう一人の主人公であるドラ・マールを中心に据えたほうが良かったのかもしれないが、それだと二つの時代を交互に見せるというこの小説の構造が成り立たない。つまりは、現代を描いたパート(瑶子が主人公のパート)が失敗(というのが言い過ぎだとしたら、少なくとも成功しなかった、と言い換えよう。)だった。

カメラを止めるな!

ざっくり言うと、この映画は3部構成になっていて、最初にワンカットで30分(話は横道に逸れるが、いまこの記事を書いているスマホで「30分」と出力させるためには、「さんじゅっぷん」と入力しなければならない。話を戻す。)くらいB級ホラー映画が流れる。2番目に、その撮影の1か月前の場面が続く。そこでは、そのB級映画を撮ることになる監督とその家族が撮されている。そして、最後三番目に、そのB級映画を撮影しているところが映される。

ここで、我々観客は、最初に映されたB級映画がどのように撮影されたのかの顛末を知り、笑い転げる。はずの映画なのだが、私個人は、一回クスリとしただけだった。面白くなかったわけではなく、私がそもそも映画を観て笑うような人間ではないだけのことである。それなりに面白い映画ではあった。

もっとも、「これが何十万人だか何百万人だかを映画館に呼び寄せた映画か?!」と言った人は多かったと思うし、私も心の中でそう呟いた。その程度の映画だと思うが、その程度の映画が爆発的にヒットすることもある。具体例をパッと思い出すことはできないが、きっとそういう映画はある。

そもそも、この映画が面白いと言う人に、内田けんじの「運命じゃない人」か「アフタースクール」を観てみてほしい。すでに観てたらゴメンだけど、「カメラを止めるな!」の一番のキモであるアイデアを内田けんじの映画がいかに鮮やかに作品に仕上げているかが分かっていただけると思う。

最後に蛇足を一つ。私は最初に、この映画は3部構成であると書いたが、ほんとは、最後のエンドロールにちょっとした味があって、この部分を加えて3.1部構成と言っていいかもしれない。

Missライアー

 

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いわゆる「ジャケ買い」ならぬ、「ジャケ借り」してしまった。少女の面影をかすかに残すきれいな顔に意思の強そうな目。そして体にピッタリした服がその下にある豊かな乳房を想像させる。

キャラは満点。そして、僕の好きな密室の心理劇。面白くないわけがない。と思ったのだが、一人目が死んだあたりでもう、結末が分かってしまった。

こんな(ある意味ハッピーエンドな)展開にするよりは、ジャクリーンが目一杯悪知恵を働かせて他の5人を蹴落とす、その悪知恵の巧みさを突き詰めたほうが、僕的には好みである。

ただそうなると、みんなしてジャクリーンをハメたという、この作品のキモとなるアイデアは使えなくなるが、元々それはありがちなアイデアなので、捨てても惜しくはないだろう。

あ、主人公のジャクリーンを演じた女優さんの名前を記しておこう。メーガン・ウェスト。たぶん初めて見た女優さんだと思うが、これから他の作品で目にすることもなさそうだけど、この作品に限って言えば、魅力的だった。